新庄 智のショ−トスト−リ−

** このスト−リ−はフィクションです。登場人物・背景等はすべて架空のものです。


SCENE.3  −− 標準語 −−

 

 同じ事務所にネットミュ−ジシャンの先輩である「つっさん」ことMITSUNORI氏がいる。彼は同じく大阪の出身で、いろんな意味で人生の大先輩である。

「つっさん!もう東京にきて3年にもなるんだから、いいかげん標準語をマスタ−しないとファンがその大阪弁聞いたら、あまりのギャップに逃げてしまうよ。!」 「なにいうてんねん!新庄こそ大阪人らしく大阪弁でしゃべれ!気色悪い。」

彼は根っからの大阪人で、いつもコテコテの大阪弁で受付の女の子達を笑わせている。でも不思議な事に曲を作る時は標準語であまい素敵な詞を書くのだ。だから彼のファンのほとんどは若い女の子である。

こんな出来事があった。昼休みに彼のファンがお弁当を持って事務所を訪ねて来た。20歳ぐらいの可愛らしい女の子だ。昼休みで受付の女の子は食事でいなかった。ちょうど宅配のピザを待っていたMITSUNORIが応対した。

「あのう。MITSUNORIさんはこちらの事務所ですよね。」 「おう。俺....なんの用や?」(自分だと言いかけてやめた。)「私、MITSUNORIさんの大ファンなんです。いつも素敵な詞で感動して...。それで、よかったらこれ食べてもらえないかなと思って....。」 「あのなあ、普通、こういうのは受付けへんのやで。でも今日は特別俺がMITSUNORIに渡しといたるわ。」「夕方また弁当箱取りにきい。サインぐらいもうといたるわ。そのかわり内緒やで。今回だけ特別やからな。」「ありがとうございます。」女の子は弁当を置いて喜んで去って行った。

その光景を含み笑いで見ていると...「なんや新庄!」「なんで自分がMITSUNORIだって言わなかったんだい。?」「あほう。ミュ−ジシャンはイメ−ジが大事なんや、わかるか?新庄。!」「なんだ、自分でも気にしてるんだ。」「うるさいわい。!」

なんだかんだ言いながらも彼女の事が気にいったのか、MITSUNORIは苦手な牛肉も含めて彼女の弁当をきれいに食べて、サインとお礼の手紙を標準語で書いた。

夕方、彼女が弁当箱を取りに来た。「ほら、ちゃんとサインもうといたったで。卵焼きがおいしいって喜んどったわ。」「本当?うれしい。!ありがとう。この事務所はいい人ばかりなんですね。」「そうや。」「大阪の方ですね。?私も大阪なんでわかります。私も普段はコテコテの大阪弁なんですよ。」「ありがとう。じゃあさようなら。」....。

唖然としているMITSUNORIを見て、後ろでクスクス笑っていると...「なんや新庄!」「いえいえ...。ピザごちそうさま。!!」

 

−−− 「標準語」終わり 2000.4.16 新庄 智 −−−


このペ−ジではみなさんのご意見・ご感想を募集しております。