新庄 智のショ−トスト−リ−

** このスト−リ−はフィクションです。登場人物・背景等はすべて架空のものです。


SCENE.1  −−  どしゃ降り  −−

 

 暮れも押し詰まった12月のある日、その日はレコ−ディングも早く終わり濃紺のGTOに愛用のテレキャスタ−を積んで目黒のスタジオを後にした。街は突然降り出した大雨に動揺したのか、午後11時を過ぎているというのに通勤ラッシュの様な大渋滞である。

 信号待ちで歩道にびしょぬれで立っている彼女を見つけた。タクシ−でも待っているのか青信号なのに渡る気配もない。今日の雨は尋常ではない。コ−トも鞄も脱水していない洗濯物の様に水がしたたっている。

 見るに見かねて声をかけた。「傘は持ってないのか?」「見ればわかるでしょ!!」怒った顔で間髪入れずに返された。

「この渋滞だ。こんな所に居たってタクシ−なんて来やしない。駅の方だろ?乗ってけよ。」 彼女は怒った顔のままためらっていたが、信号が青に変わるタイミングでGTOに飛び乗った。

「ずぶ濡れじゃないか。何分立ってたんだい。?」「3時間。」相変わらず怒った顔で間髪を入れぬ攻撃である。「3時間。!? 雨が降りだしたのは30分ほど前だ。」

「あなたって最低な人ね。いつもこんな風にナンパしてるの?」終始怒った顔である。「乗せてもらってそれはひどいんじゃない?」「私降りる。」「わかった。!わかったよ。俺は最低な人です。」

「あなた音楽やってるの?」「三味線を少々。」終始怒った顔。「知ったかぶりで恋愛の歌なんか歌ってるんじゃないでしょうね。?」「はいはい。俺は知ったかぶりで最低なナンパ師です。」やっと笑った。

「男にだまされたのよ。来ないとは解ってたんだけど...。3時間も..。私バカみたい。」おいおい俺は何も聞いてないよ。!!それから愚痴を延々20分間。

「やっと着いた。中目黒だよ。凄い渋滞だったな。」降りる気配がない。「あなたこのまま私を降ろしていいの?ナンパ師なんでしょ。?」 −−はぁ...???。「じゃあどこまで行けばいいんだい。?」道玄坂...。」相変わらず怒った顔で間髪を入れぬ攻撃である。

 

−−− 「どしゃ降り」終わり 2000.3.20 新庄 智 −−−

GTO・・・・・三菱のスポ−ツク−ペ。 テレキャスタ−・・・・フェンダ−が有名なエレキギタ− 道玄坂・・・渋谷のHOTEL街


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